移住者インタビュー

この土地で持続可能な暮らしを続けていきたい。

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柿渋染めの商品をインターネットで全国へと発信している弘瀬剛敏さん・小川いずみさんのインタビューです。

弘瀬 剛敏さん
小川 いずみさん
(ユルクル)

  • 出身地:土佐清水市
  • 現住所:土佐清水市
  • 移住年:2012年

―Uターンしたきっかけ

(弘瀬さん)
18歳の時、高校卒業と同時に土佐清水から大阪へ。
しかし長男ということもあり、大阪へ出てからも両親のことが気がかりでしたし、30歳を目処にいずれは土佐清水に帰りたいと思っていました。
当時ちょうどインターネットが普及し始めた頃で、「この技術を身に付ければ、土佐清水でも仕事が出来る」と考え、大阪でIT関係の会社に就職しました。

都会での生活は楽しかったですが、IT技術の進歩は早く、1ヶ月先にはこれまで使えた技術が使えなくなることも。東京に転勤後は新幹線で東京と大阪を往復する日々による不規則な生活が続き、ついには身体を壊してしまいました。
会社を退職した後、28歳の時に大阪で「自分のペースで仕事がしたい」とフリーランス(個人事業主)として仕事をはじめ、高知へのUターンを決めたのは、33歳の頃。
徐々に顧客もつき、仕事が安定してきたタイミングで土佐清水に戻りました。

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(小川さん)
生まれは神奈川県横須賀市ですが、小学校3年生の時、母親の実家である土佐清水に移り住みました。
清水中学校、清水高校と進んだ後、高知市に移り住んだ事もありましたが、やはり土佐清水が好きで戻ってきました。

小川さん

―実際、高知に戻ってきて苦労したこと

(弘瀬さん)
都会的な暮らしをするとそれだけお金も使いますし、その分働くというサイクルになります。
アナログな生活がしたくて帰って来てるので環境の変化をそれほど苦労と感じた事はなく、楽しく暮らしています。
ただ、戻ってきた頃は、土佐清水での仕事は漁師や農業などの第一次産業がほとんどなので、時間が不規則で家で作業する事の多いこの仕事を理解してもらえず「あそこの息子はいつも家で何をしてる?」と不審がられる事もありましたね。地元の人たちとは生活スタイルが違うので、戻って1年くらいは都会の方が住みやすいと感じる事がありました。

―お仕事について

(小川さん)
土佐清水市内のパン屋さんで経理事務の仕事をしながら、たけくん(弘瀬さん)と柿渋染めの製品の企画、制作ユニット「ユルクル」として活動しています。
柿渋染めをはじめたきっかけは、土佐清水のお店で大好きな柿渋の布を購入してたけくんに見せた時、「そんなに好きなら自分で染めてみたら?」と言われたことから。それから好きなリネンを柿渋で染めはじめました。それが2年前。小さい頃から縫ったり編んだりするのが好きだったんですが、まさかそれを仕事にするなんて考えたこともありませんでした。

柿渋バッグ

はじめは身近な人に作る事からはじめたのですが、「ユルクル」としてHPやFacebookを立ち上げた事でカフェや雑貨店のオーナーから問合わせがあり、徐々にインターネットや口コミで広がっていきました。

柿渋は青柿を絞って発酵させ、熟成して生まれた天然染料で、昔から民間薬として使われてきた日本人の生活の知恵のひとつです。
その柿渋を使用し、1ヶ月間かけてリネンの布を染め上げていきます。柿渋の布は太陽光に当たる事によって発色し、その色合いを深めていくので、一度染めた後、2~3日天日に干し、5回ほどその作業を繰り返す事で染めが完成します。バッグやエプロン、コーヒーフィルターなど2人で企画したものを私が制作し、たけくんが色々なツールを使って発信していく。ハンドメイドサイトやHP、Facebook からの注文が中心ですが、全国各地からお問合わせがあり、現在納品までに2ヶ月お待ちいただいてます。

bag 小川さん

(弘瀬さん)
僕は「ユルクル」の活動に加え、「CREATIVEWORKS」としてフリーランスでHPの制作や更新、運用の委託作業やデザインを請負う仕事を行っています。
顧客は関西と高知県幡多地区中心。月に一度、打ち合わせのため、土佐清水から関西に出向いています。
その他、土佐清水市地域おこし協力隊の仲間が立ち上げた「TOSASHIMIZU LOCAL PRODUCTS」に関わっています。メンバーとは「田舎で何か作り出したい」という共通認識のもと「宗田節」や「土佐文旦」など地元の品を新しい購入層に向け販路開拓したり、パッケージデザインを変更するなど従来の売り出し方とは違った方法で発信しています。今後は土佐清水で作られたものをインターネットを使って、日本だけでなく、海外へ売り出して行きたいですね。

―これからについて(どういう風に暮らしていきたいか)

(弘瀬さん・小川さん)
自分たちの使うものも出来るだけ捨てずに長く使っていく、そんな生活をしていきたいねっていつも話しています。
「ユルクル」の語源は、私がどこかユルイ感じなのと、たけくんが色んなことをクルクル頭をまわして考えてくれる所からきています。
そして自分たちが使いたいと思うものを作り、喜んでもらえる誰かに渡していく。そのサイクルがクルクルと循環してまわっていくという意味も込めています。そんな想いを「ユルクル」の活動を通して伝えたいですね。

土佐清水市津呂は海抜55.8mで津波の心配が少ない地域なので、いずれはこの地で農業をしながら自分たちが食べるものを作り、自給自足をしながら持続可能な暮らしをしていきたいと思っています。
昔は土佐清水出身であることにネガティブなイメージを持っていましたが、今は、この地で生まれたことに自信を持っています。地域の人たちにもそう感じてもらえるようにこれからも土佐清水のことを様々な形で発信していきたいですね。

―移住検討者へのメッセージ

(弘瀬さん・小川さん)
人があたたかく、人間関係が密接なので安心して暮らすことができる反面、昔から受け継がれている地域のルールがあります。
それは地元の人にしか分からないので、「いきなり移住」より、まずは実際に地域に赴き、事前に情報交換できる同世代の知り合いを作っておくと「移住者」という目で見られず地域に入っていく事が出来ると思いますね。
移住される方と地元の方たちを繋ぐという意味で、何か僕たちにも協力出来ることがあればと考えています。

土佐清水には土地の人しか知らない魅力ある素材がまだまだある。今まで培ってきた様々な経験を活かして、この地で何かを生み出し発信していきたい人にはチャンスの場所。そんな意欲がある方とぜひ何か面白いことをやっていきたいですね。

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