移住者インタビュー
高岡郡梼原町にある、農薬・化学肥料不使用で野菜を栽培する農園。ここでとれたばかりの新鮮な野菜が、『食べチョク』やふるさと納税、個人宅配を通して全国に届けられています。 北海道と静岡からIターンした夫婦が運営する『雲の上ガーデン』、ここには自然体で働く生き方がありました。
尾森 昇兵さん/沢智さん
自分らしく生きるために模索した日々
沢智さん-
静岡県出身で、高知県立大学への進学を機に高知市で暮らし始めました。それまで高知県とは全く接点はありませんでしたが、初めての一人暮らしということで楽しく、違和感なく高知になじめましたね。
実は私が高知に来た後、両親が梼原町に移住しました。もともと移住先を探していたところ、新聞記事で紹介された梼原に興味を持ったという経緯です。
私は大学卒業後にやりたいことが見つからず、実家となった梼原に軽い気持ちで帰ったところ、そのまま住み続けているという感じでしょうか。大学時代の高知市と今の梼原町という、いわゆる二段階移住です。
そして、何がやりたいかわからない状態ではありましたが、農業には興味があり、愛媛県八幡浜市のみかん農家のアルバイトに行ったところ夫と出会いました。
昇兵さん-
出身は北海道でサラリーマンとして13年間勤めましたが退職し、もともとやりたかった農業の仕事を季節労働でスタート。農業を始めた1日目から面白くて仕方なくて。「今までやってきたことは何だったんだろう、ずっと続けよう」と思いました。
妻と出会い、北海道や沖縄の与那国島、岩手など季節ごとに各地を転々として一緒に農業に携わりましたが、妻の「梼原いいところだよ」の言葉で高知に移住することに。高知とは何の縁もありませんでしたが、妻の両親が住んでいるという点が大きかったですね。
また、北海道では「半農半X」で、夏は農業をして冬は別の仕事をしなければなりません。梼原では通年農業ができるというのも魅力でした。
季節労働でいろいろな場所を見てきましたが、梼原町は暑すぎたり寒すぎたりすることもなく、農業がやりやすい環境に感じたのです。
有機栽培農園を事業承継
沢智さん-
今、経営している農園は、先代から有機栽培をしていて、ゆくゆくは事業承継する予定で2019年から夫婦で研修を始めましたが、翌年からコロナ禍になってしまい…。取引先が立て続けに倒産するなど思い描いていた形ではなくなり、承継のタイミングも当初のタイミングより早くなりました。
しかし、野菜の作り方や価格の設定など、ノウハウを教えてもらった上でのスタートだったので比較的スムーズに進められました。
昇兵さん-
事業承継後、やりたかった有機栽培ができるということで、ここで農業をやるしかないという後押しになりました。実は子どもの頃は野菜が嫌いだったのですが、自分で作った野菜はおいしく、今では食べられない野菜はないほどに。有機農法だからおいしいというわけではありませんが、とれたて新鮮の野菜はおいしいものです。
2023年に承継後はコロナ禍で販路も変わってしまったので、それまでレストランや仲卸などのBtoBだったのをBtoCにし、「食べチョク」サイトも活用し個人向けにシフトしました。
沢智さん-
作っている野菜の種類などは前代表の時と基本的に変わりませんが、私たちの生活スタイルなどが個人向けに合っていると考え、拡充してきました。
これまで行っていなかった県内のマルシェでも販売するようになったのも大きな変化ですね。
首都圏や関西のお客様が多いですが、東京のレストランのシェフから、うちの野菜は「ミネラル分を感じる」と言われました。しかし、シンプルな作り方で肥料も少ないので、何か入っているはずはありません。その理由は、梼原の環境だと思っています。
降雨量が多く水もキレイなことや、寒暖差が大きいことで、ごく自然に育ててもおいしくなるのです。移住して感じるのですが、梼原でできたものは何を食べてもおいしいですね。
“不便”なことも楽しめる温かい環境
沢智さん-
梼原での暮らしは正直言って“不便”です。しかし、私たちは自然あふれる家の周辺で過ごすことが大好きなので便利な生活を求めてはいません。
子どもは今、保育園の年長さんと2歳ですが、子育てで困ることは何もないです。集落に小学生以下の子どもがいるのは我が家だけなので、周囲の人たちがすごくかわいがってくれて。みんな親戚のような感じで、のびのび育っていますね。
そして、梼原町は保育料や給食費が無料、医療費も高校卒業まで無料というのも助かっています。とても子育てしやすい環境で、夫も私も地元に帰りたい、他の場所に住みたいという気持ちはありません。
昇兵さん-
畑で好きなことをやるという点では、梼原町は自由度の高い町だと感じています。周囲の方たちもいろいろと協力してくれるので、やりたいことを実現しやすい環境なのではないでしょうか。
暮らしの面では、移住当初は町外まで定期的に買い物に行っていましたが、今は梼原町内で買えるものでいいか、という気持ちになっています。昨今はオンラインショッピングも充実しているので、困ることはないですね。
沢智さん-
仕事で畑に行かない日はありませんが、基本的に17時には帰る生活をしています。繁忙期もありますが、休みがないという負担はないですね。作業で疲れる、暑い寒いといったことはあっても、嫌な仕事は1個もありません。生活の一部として農業を楽しんでいます。
これからやりたいこと
沢智さん-
米作りにも挑戦したいですし、にわとりも飼いたい。やりたいことが山ほどあります。目標は自給率を上げることです。野菜はほとんど私たちが育てたものですが、お肉も最終的には自分たちで何とかしたいと思っています。時間が足りないですね。
そして、今後の事業展開としてはふるさと納税にもっと力を入れていきたいと考えています。ふるさと納税は、自分たちだけではなく町のためになるもの。梼原に貢献していきたいです。
また、現在は町内のカフェなどにも野菜を卸していますが、梼原にわざわざ来てくれた人に梼原の野菜はおいしいと感じてもらい、また来たいという気持ち、つながりを増やしていけたらと考えています。
“梼原の一員”という気持ちが移住には大切
沢智さん-
移住後、お客さんの気持ちでいると楽しくありません。梼原に何かしてもらおうと思っていても何も起きないので、最初から梼原の一員だという気持ちで来てほしいと思います。
移住先として魅力的な町や条件の良い場所がほかにもたくさんある中で、梼原は条件面で特別恵まれているわけではありません。
しかし、梼原は自分でやろうと思うと自由度が高く、周囲の方が助けてくれる場所。移住後に定着している人は、自分でやりたいことを自分で進めている人、ありのままの自分でいられる人なのではないかと感じています。
また、移住後に起業を検討している場合は、まずは梼原に住んでみて、日々の暮らしの中から梼原に合うビジネスを見つけることをおすすめします。
また、地域で快適に暮らしていくには人づきあいも大切です。特に、草刈りとあいさつは大事!集落の中に飛び込まずに、田舎の良いとこ取りはできません。
昇兵さん-
定期的に開かれる集落の集まりには参加した方がいいと思います。周囲とうまくやらないと自分が辛くなりますし、いざという時に助けてもらえません。長く住みたいならなおさらです。
初めは慣れないかもしれませんが、自分から地域に入っていけば、居心地が良くなっていきますよ。
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