移住者インタビュー
36歳の時、大阪府から高知市へ移住し、3年後、二段階移住で大豊町へと移住された前田さん。留まることを知らないほど前向きで、マルチに活躍する前田さんにお話を伺いました。
前田 美穂さん
初めて高知を訪れ、2日後には移住を決意
移住前は、大阪でごく普通のOLとして働いていました。大阪でカフェをしていた友人が高知へ移住し、お店も移転したことをきっかけに2泊3日で高知に遊びに来ました。当時は、毎朝満員電車で通勤し、所属部内の課長職として忙しい日々を送っていて、なかなか「自分の時間」が持てませんでした。
そんな自分の生活に疑問を感じ始めた頃の高知訪問。大阪に戻った2日後には、会社に辞職の意向を伝えました。高知での“会社員以外の働き方や時間の流れ”にとても魅力を感じました。それから3ヶ月後には高知市へ移住していました。
移住後しばらくは友人のカフェで働き、高知での生活に慣れてきた頃には、新しく趣味として加わった手芸に関わりたいと、手芸センターでのアルバイトや他の仕事を掛け持ちするようになり、カフェでのアルバイトは辞めました。
どの仕事も好きでやりがいがあったのですが、想像以上に忙しくて。休むべき時間も仕事のことを考えてしまうようになり、徐々に仕事と自分の時間とのバランスが取れなくなっていました…
予想外の二段階移住
高知市は交通の便も良く、お店もたくさんあり便利ですが、向かい合わせに並んだコンビニを見ては、「こんなにコンビニいる?!」と思わずツッコミたくなります。高知へ移住したにもかかわらず、どこか大阪と変わり映えのない毎日になってしまっていることに気付いた頃、大豊町へ移住した友人から、「空き家バンク」に家賃の安い物件があると聞きました。大阪で月7.5万円であった家賃を、高知市では月4.5万円に抑えることができていたので、「今住んでいる所よりも安い物件がある?!」と驚きました。都会的な生活に少し疲れを感じていた私は、「とりあえず、空き家バンク利用の登録しておいたら?」という友人の言葉に背中を押され、NPO法人 げんきおおとよのサポートを受けながら家探しを始めました。
翌月には、大豊町内で家が決まり、高知市でやっていたすべての仕事を辞め、大豊町へ二段階移住(※1)。年度途中でしたが、運よく募集があった役場の会計年度任用職員(※2)として働くことになりました。淡々と進んでいく私の移住のスピードに、周囲の人からは「不安はないの?!」とよく聞かれましたが、この会計年度任用職員の募集要項に「事務員(獣の耳を触れる方)」という一言があり、その仕事内容に「おもしろそう」と惹かれました。
実際に大豊町で生活してみると、高知市と比べれば不便です。でも、私はそのことはマイナス要素ではないと思っています。
(※1)二段階移住…高知県内に移住するにあたり、まずは比較的都市部である高知市に移住・滞在(1ステップ目)し、そこを拠点に高知県内を巡りながら自分に合った場所を見つけ、最終的に安心して移住(2ステップ目)するという、移住の一つの方法。
(※2)会計年度任用職員…地方公務員法の改正により新しく導入された非常勤職員の制度。従来の非常勤職員や臨時職員、パート職員は、これに移行され、任期が定められているもの。
役場職員ともう一つの顔
役場での初年度は、鳥獣を取り扱う課に配属になり、日々猟師の方たちとコミュニケーションを取っていました。現在は移住関係の課で、空き家の掘り起こしや移住相談に対応しています。いずれの課でも、役場にいるからこそ分かることや考えることがあります。身の回りの問題によく目が行くようになり、狩猟の講習を受けてプライベートでも狩猟を始めたり、廃業しようとする地元タクシー会社の事業を引き継ごうと検討したり、地域の課題をなんとか自分が解決できないかと考えていました。
現在は、役場職員として働きながら、週末に「みずがめ食堂」という食堂を経営しています。高知市から大豊町へ移住した頃、よく感じていたのが飲食店が少なすぎるということ。友人が遊びに来た際に連れていきたい飲食店が少ないことが気になっていました。
そんな時、合同会社ワタナベファームのスタッフの方から「ここで食堂やってみたら?」と背中を押してもらいました。試作品を作る傍ら、保健所の許可を取り、2024年9月、元々農家カフェであったログハウス調の建物を活用した、麻婆豆腐とたこ焼きの店をオープン。麻婆豆腐定食には、大豊町産のお米、山椒、生姜、ニンニク、ネギを使用しています。
―この食堂へ足を運ぶお客さんは、食堂よりもさらに標高の高い梶ヶ森を訪れ、一休みするために寄ってくれる方が多いそうです。「いつかお店を始めたら並べたい」と前田さんが集めてきた本を自由に読むことができ、前田さんお気に入りのレコードをBGMに、冬は薪ストーブで温めた空間で、日常を忘れてゆったりとした時を過ごせそうです。
これからやりたいこと
今後の目標は、チェーンソーを扱えるようになること。一人前に扱えるようになった暁には、吉野川の美しい景観を遮っている道路沿いのうっそうとした木々をきれいに伐採し、道行く人に見てもらえるように整備したいです。また、薪を自分でカットし、乾燥させて使いたい。今は家の庭に元々置いてあった廃材を使用しているのですが、ゆくゆくは自前の薪で火を起こしたいです。
大豊町は「今の暮らし、どうなんだろう…」と感じている方にとって、答えまでは出せないとしても、新たな一歩を踏み出すヒントがたくさん見つかる場所ではないかと思います。
―大豊町に来てから、前にしか進まないと話す前田さん。その感性はロックでありながらも、人生の面白さを感じつつ、納得できる生き方をされているように思います。「“普通”になりたいと思っていた頃は、幸せではなかった」。好奇心豊かな前田さんが飽きることなく楽しめる大豊町の魅力は、まさに前田さんの生き方にも反映されているようです。
そんな前田さんが大豊町で絶えず新たな刺激を受け続けているのは、地元の70代後半のおばあちゃん(通称、ウメコ)。こんにゃく作りやシキミ採りなどを教わり、今では毎日一緒に過ごすほどの仲だとか。「年齢を感じさせないぐらい考え方が今風で、話していると本当に楽しいんです!」と、目を輝かせながら話してくれました。
■みずがめ食堂
住所:高知県長岡郡大豊町佐賀山キチヤ1253-3
営業日:土曜日、日曜日 ※冬季は12月中旬~2月末まで休業(雪の状況によります)
営業時間 12:00〜17:00 ※予約制
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