—有機農業を始めたきっかけは何ですか?
中学生の頃に膝を痛めた事がきっかけでした。当時、病院に通ってもなかなか改善しなくてね。
そんな時にヨガと出会い、要因は背骨の歪みからくる不調だったと分かったんです。
本来あるべき姿勢に戻し、運動や食事などの生活習慣を見直す中で膝も曲がるようになって徐々に良くなっていきました。
その時に「玄米食」を知って、食生活で身体は作られるという事を学びました。
この経験から最初は医者を目指していたけど、次第に、医者が病気を治すのに対し、自分は『健康に毎日食べられる、安心・安全な作物を作りたい』という想いを持つようになりました。大学卒業後は教師になりましたが、いつかは実家がある四万十市蕨岡の農地を引き継いで有機農業がしたいと思っていました。
病気になったおかげで、人生の生きる道筋ができましたね。
—教師から有機農家に転身されたんですね!
大学卒業後は、高知県で15年間教師をしていました。
最初は英語を教えていたけど、途中から日本語コースの専任となって、年間約100名の留学生に日本語検定を受けさせて日本の大学進学をサポートしてきました。生徒たちは、パン食からお米を食べるようになると、「お米はどうやってできるの?」と疑問を持つようになったので、実家の田植えや稲刈り作業を体験してもらったこともありましたね。そして45歳の時に、夢を叶えるべく地元に戻りました。
最初は一般企業に転職し、休日は手探り状態で有機米に挑戦する日々。
アイガモ農法を取り入れたり試行錯誤しながらノウハウを身に付けていく中で、四万十市の学校給食へ供給できるまでになりました。
—四万十市は食育に力を入れているんですよね
そうなんです。ちょうど四万十市に戻ってきた2002年に、当時の市長が無農薬・減農薬で育てた地元の作物を優先的に使用しようと提言し、
“四万十ふるさと給食”
が始まった時期でした。 またその頃、知り合いの旦那さん(※山本武史さん)で「会社を辞めて有機農業がしたい」と言っている人がいてね。「本気だったら、米作りなら教えられるよ」と話をして指導することになったんです。 まずは農地探しからのスタートでした。当時、四万十市江ノ村という地区は耕作放棄地で有名だったので、この場所なら見つけられるかもしれないと思って訪ねてみました。“使える農地はないか?”と最初に声を掛けた農家さんが、たまたま母親のいとこが嫁いだ先の旦那さんでね(笑)。相談したら世話してくれることになったんですよ。
—様々な出会いとタイミングが重なったんですね。
区画整理もされていない荒地を開拓して、本当にゼロからのスタートで大変でしたね。でもちょうどこの時期に、また幸運なことがありました。当時、耕作放棄地の課題があった四万十市では、有機農業の育成補助事業に取り組もうと動いていて、参加しないかと声が掛かったんです。市の事業として2年半有機農業にチャレンジできることになり、会社も辞めて専念することになりました。
—ゼロからスタートし、今の状況はいかがですか?
山本さんはIターンでサラリーマンから転職し、本当にゼロからのスタートだったけど、3人の子どもを育てて本当に立派ですよ。私自身も、さらに知識や技術を磨き、市場調査もして、今では23haの規模で有機米(コシヒカリ、よさこい美人、にこまる)や野菜を育てています。今は数名のパートさんを雇用しながら黒字を維持しています。これまで農業研修生等を5名受け入れ、2名が独立しました。
—研修生の受け入れや独立をサポートしているのはなぜですか?
有機農業に挑戦したい人はたくさんいるけど、米作りは機械や倉庫などの設備投資に最低でも数千万は掛かります。日本人にとってお米は一番身近なのに、実は色々とハードルが高いんです。一方で、江ノ村の農家さんは高齢でだんだんと辞めており、今は地元の農家さんが2名しかいない。このままでは地域も成り立たない状況。 健康に毎日食べられる作物を提供したいという想いがあるから、次世代に繋いでいきたいんです。
<独立した2人からのメッセージ>
花岡優さん(Uターン)
「移住後に、思っていたのと違ったと後悔しないためにも、良い意見ばかりでなくマイナスな事もしっかりと事前に情報収集すること大事」
山本武史さん(Iターン)
「米農家はお金も掛かるため、ある程度軍資金が必要。最初の4、5年は苦労したので、独立を目指すには覚悟がいる。農業は自然が相手なので思うようにいかないことも多いが、そこが楽しい」
—どんな方に来てもらいたいですか?
希望と情熱を持って、「有機の米作りがやりたい!」と意欲のある方に来てほしいですね。
また、私も今年67歳になるので、ゆくゆくは事業を譲ることも考えています!
\一緒に地域を盛り上げよう/
「決まりきったレールより、冒険する方が楽しい」と笑う柔和な福留さん。
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