移住者インタビュー
東京でインプットしたことを、高知での活動に活かしたい!
岡崎 麻有さん
「自分の遊び場を広げよう」と思って帰ってきたような感覚
大学進学のために上京して、東京で17年間暮らしました。高校まで過ごした高知に帰ったのは、2023年2月のことです。周りからは、「よく地元に帰ると決めたね」と言われることが多いのですが、あまりピンと来ない自分がいます。というのも、大きな覚悟を持って「帰る」と決めたというよりは、「自分の遊び場を広げよう」と思って帰ってきた感覚だから。「やってみないことには何も分からないから、自分の気持ちが動くことに対して行動してみよう」と選択したことの一つに、Uターンがあるという感じだから「すごく大きな決断をしたんだね」ととられると、ちょっと戸惑ってしまいます(笑)
東京では、雑誌や広告、映像制作などに使用する撮影スペースやロケーションを紹介する広告会社に長く勤めていました。メディアや広告のビジュアル制作業者に営業に行ったり、撮影現場に立ち会ったりと、人との出会いの多い刺激的で楽しい毎日でした。
そんな中、ふと、この先の自分の人生について考えた時に「何かもっとできることがあるんじゃないかな」と思いました。仕事にも慣れ、順調に過ごしている毎日ではあったものの、「何か新しいことを始めたい」という思いが芽生えると同時に、「この先の人生で、何を積み上げていこうか」と考えるようになりました。
やりたいことを諦めず、仕事の面でも新たな挑戦ができる道に、家業があった
私は、大学時代から木版画の創作に打ち込んできて、会社員になってからも木版画に向き合う時間を大切にしてきました。会社はそんな私の姿勢にも理解を示してくれて、本来は週5日出勤のところを週4日出勤に、残りの週1日は創作活動に充てることを許可してくれていたんです。ただ、仕事量は変わらないので、週4日の出勤日は業務をこなすので精一杯。何か新しいことに取り組みたいと思ったら、創作活動を諦めるしかありません。でも創作から離れてしまうのには抵抗があり、どうやったらやりたいことを諦めずに、仕事の面でも新たな挑戦ができるかを模索していました。
また、いろんな情報に触れられて、カルチャーに溢れた東京も大好きだけど、17年も過ごしていると行く場所も決まってくるし、常に最先端のものに触れていたいというわけでもなくなる。年を重ねるにつれ、別に東京に住み続けなくても、たまに行くだけで十分かもしれないとも思うようになっていました。
その中で考えるようになったのが、両親が佐川町で切り盛りする雑貨店「キリン館」に携わる道です。改めて考えてみると、これまで東京でいろんなカルチャーに触れ、たくさんの物を見てきた経験が、店作りにいかせるかもしれないと思いました。店に併設するギャラリーの運営も楽しそうだし、自分の創作活動ともフィットする。仕事と創作活動との両立を考えて、両親とともに家業を切り盛りしていく方が無理がなく自然な流れで楽しそうに思えました。何より、家業があり、自分がそこで挑戦することができるという環境が、とてもありがたいことだと思えたのです。
ちょうどその頃、キリン館(写真)に併設するギャラリーで、友人の木版画の展示をする機会があり、予想以上にたくさんの人が展示を見に来てくれたことも、家業に携わる決意を一押ししてくれました。多くの人が喜んで作品を手にしてくれる光景を目の当たりにして、「良いものが伝わるのに都会もローカルもないんだ」と、より気持ちを固めることができたんです。
待っているだけより、能動的になった方が面白い
その後、思い切って会社を辞めてUターン。都会暮らしが長かったので、最初からキリン館のある佐川町に住むよりは、一旦高知市で生活してみようと思いました。せっかくだから都会にはあまりない環境に住もうと、川沿いにある家を探しました。現在は、高知市内から佐川町までJRで通勤しています。高知での生活は始まってまだ数カ月ですが、日曜市で野菜を買ったり、自転車で街を散策してお気に入りの場所を見つけたりと満喫してますし、これから面白いことがいろいろと始まりそうでワクワクしています。高校卒業と同時に上京したので、大人になってから戻ってみると、18歳までの高知のイメージとはまた全然違うんですよね。他県から移住してきた人も結構いるし、地元の人だけじゃないコミュニティもあって、そこでまた新たな動きが生まれていたりして、面白いなと思います。
東京にいるときは、何もしなくてもたくさんの情報が溢れる中にいて、映画や舞台、美術の展示など、いろいろなカルチャーや情報をインプットしたいという欲求が強かったけれど、高知に帰ってきたら、そのペースが大きく変わりました。これまでインプットに使っていた時間を、創作活動などのアウトプットに使えるようになった分、感度を保つために自分で意識的に情報を摂取しないといけないと思っています。今は、そのペースや方法を模索している途中ですね。
移住というと、都会と田舎とを比べてどっちがいいという比較論になりがちですが、私は高知も好きだし、東京も好き。どちらも同じように大切で、大好きな場所です。そしてどちらの良さも分かっているからこそ、それをうまく自分の強みにできたらいいなと思います。店作りにしても、地元の人はもちろん、県外から来た人にも楽しんでもらえる空間を作りたいし、ただ物を売るだけではなく、音楽やアートなどいろんなカルチャーとの出会いの場も作りたい。それは都会か田舎か「どっちか」を選ぶんじゃなくて、「どっちも」を行ったり来たりすることで、いいバランスを作れるんじゃないかと思うんです。
待っているだけより能動的になった方が面白いということを、高知に帰ってきて実感しています。話が動き始めたらびっくりするほど展開も早いし、自分が能動的に行動したら面白いことがいろいろと生まれそう。まだ始まったばかりの高知生活ですが、楽しみながらいろんなことに挑戦してみたいと思っています。
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