移住者インタビュー

山仕事だけが林業ではない。新しい林業のかたちを模索する。

掲載日：2021.09.24
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佐川町の林業に「ビビッときた」という村澤さん。林業の働き方を“再定義”しながら、山仕事以外の活動も積極的に行う村澤さんにインタビュー。

村澤友輔（むらさわゆうすけ）さん

出身地：神奈川県
現住所：佐川町
移住年：2019年

1992年生まれ。前職は医療機器メーカーの営業。転職を検討中に佐川町の地域おこし協力隊の募集を見つけ応募。2019年4月に佐川町へ移住。現在は公務内外で林業の施業を行うほか、自伐協力隊員と2人組ユニット「ringin（リンジン）」としても活動中。

個人事業主として独立できることが魅力のひとつ！

営業の仕事をして3年が経ったころ、会社の働き方が肌に合わないと思い転職を考えるようになり、いろいろ調べていく中で一次産業に興味を持つようになりました。横浜市出身で畑や山とは縁遠い環境で育ったので、自然の中で働くということがすごく魅力に感じたのだと思います。そんな時に「日本仕事百貨」というWEBサイトで佐川町の協力隊募集情報を見つけました。卒業後は、雇われるのではなく個人事業主として独立、という働き方に可能性を感じ、すぐ役場に連絡しました。

95%は勢い、考えすぎたら移住はできない

役場に連絡後すぐに高知を訪問。役場の方に一日かけて佐川の街や林業の現場を案内していただき、夜は協力隊の卒業生の方々に食事に連れて行っていただきました。一日を通して触れた町や人の雰囲気が、自分の肌に合うなと感じたのを今でも覚えています。他の地域や他の林業の会社も検討すべきだったのかもしれませんが、佐川町の林業にビビッときたので勢いで決めました。考えすぎると移住できそうになかったので。

毎日、木々に触れる暮らし

協力隊に入ると、先輩協力隊員や、長年、山の仕事をされてきた方々の指導を仰ぎながら林業を学んでいきます。県内だけでなく徳島や鳥取といった自伐型林業が盛んな県外の地域へ視察に行き、実際に山を見せてもらう機会もありました。今では自分が新しい隊員の指導や引き継ぎ等をしながら、樹上伐採や木工制作などの活動もしています。休日には個人で山を請け負って個人事業主として仕事をしています。平日も休日も、天気の良い日は山にいることが多いですね。

新しい林業のかたちを模索する

もともと「林業＝山仕事」というイメージがありましたが、もう少し広く捉え直してみてもいいのかなと思うようになりました。今の自分には林業の働き方を再定義しようとしている感覚があります。そのうえで今後、林業を長く続けていくためには、山仕事以外に収入の柱となるものが必要と感じ、ringin（リンジン）という組織を立ち上げました（※）。ringinでは山仕事以外に木工制作やツリークライミング、樹上伐採などを行っており、これらの活動を通して木の魅力、林業の魅力を伝えていけたらと思っています。

将来的に、子どもたちが「林業」を働き方の選択肢の一つとして考えるようになってくれたら嬉しいですね。そういう活動もひっくるめて林業と言ってもいいのではないかと思っています。この9月からは、佐川町の全ての小学校で木育教室を行う予定です。

※現在木工制作のみ活動休止中、2022年1月活動再開予定

ringinとして共に活動する西尾さんと

個人事業主としての独立を目指して

来年3月の卒業までの期間を独立のための準備期間として、山仕事の一連の作業を体得していきます。また、個人でやっていくためには、木を切る技術の習得だけではなく、経営者としてのノウハウも学ばないといけません。そのために今、山主（やまぬし）さんから個人で仕事を請け負って事業主としての業務も開始しています。役場の方にもサポートしてもらいながら卒業後すぐに独立することが今の目標です。恵まれた環境に感謝しつつ、今できることをきちんとやる、という気持ちで取り組んでいます。

高知県民の人柄に心地よさを感じる

都会にいた頃と違うなと感じるのは空気の綺麗さや水のおいしさ、そして地域の人との距離感です。良い意味で距離が近いですね。都会だと同じマンションでも知らない人ばかりですけど、こっちではみんなに知られています（笑）。地域のイベントや草刈りなどにも積極的に参加するようにしています。地域の方のこういう活動ってかっこいいですよね。高知の人って海外の方のようにオープンで自分の意見をはっきり言うじゃないですか。それが心地よくて。「これは違う」、「僕はこう思う」、などとはっきり言ってくれるので、自分も言っていいんだと思えるし、オープンで良い意味でおせっかいな、気持ちの良い人柄の方が多いというのも高知の魅力です。

DIYが趣味の一つ。愛車も村澤さんが塗装

移住を考えている方へのアドバイス

移住って、ハードルが高いですよね。だからある程度の勢いは大事だと思います。勢いといってもいきなり定住するのではなく、まずは半年や1年、一定期間住んでみて、地域のしきたりなどを肌で感じてみる。協力隊もその一環だと思っていいのではないでしょうか。それで合わなければやめるのもあり、というくらいの軽い気持ちで来てみることが大事だと思います。頭でいくら考えても、実際に行ってみないと分からないことだらけです。役場の方と会って話してみる、現地に行ってみる…。行動しなければわからないので、まずは行動に移すことが大事だと思います。