移住者インタビュー






鎌倉で親子カフェを営んでいた飯島さん。移住を考えるきっかけは、娘さんの教育環境でした。「子どもが自分らしく過ごせる環境って?」そう考え始めたことから、家族に合う学校や暮らしの場所を探し始めました。
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飯島 悠史
移住先として、高知を選んだきっかけを教えてください。
2022年3月頃から、娘の学校を探し始めたのが具体的な移住検討のスタートでした。
最初から「高知にしよう」と考えていたわけではなく、いろいろな学校を調べる中で、北海道と高知に絞られていきました。
北海道も魅力的でしたが、雪への対応や自然との距離感など、鎌倉での暮らしとの違いを考えると、高知のほうが家族に合っていると感じました。
それに、鎌倉でお店をやっていたときのお客さんなど、高知出身の方が何人かいたので話を聞いてみると、皆さん口をそろえて「子育てするなら本当は高知に戻りたい」と言うんです。
ご自身の育った地域への愛着が素敵だと思いました。自分の子どももその環境で育ってほしいって思えるってなんかすごく羨ましかったんです。
「どんなところがいいの?」と聞くと、みなさん「人」と(笑)
自分達がオーガニックのカフェをやっていたので、食の部分でも「きっと合うと思う」と言ってくれたんです。それで、高知のことをよく調べてみようかなと思うようになりました。
最初はガイドブックを見たり、資料請求をしたりしました。妻のほうがリサーチ力が高くて、どんどん情報を集めてくれたんです。
一方で僕は、鎌倉で11年間暮らしていたので、「これがなくなるんだ」と、失うものばかり考えてしまって。今までの暮らしを手放すことが寂しくなっていたんですよね。
そんなとき、妻から「まずはプラスの情報を集めて、そこからプラスがどれだけ減るかで決めればいいんじゃない?」と提案があり、最初からマイナスを積み上げるのはやめて、まずは自分たちにとってのプラスを考えてみることにしました。
その年の6月、東京・有楽町で開催されていた「高知暮らしフェア」に夫婦で参加しました。そこで各市町村の担当者の方が、希望する小学校への交通アクセスや習い事など、僕たちの生活の状況に合わせて自分ごとのように一緒に考えてくれたんです。
それがすごく嬉しくて、「あぁ、人がいいってこういうことなんだ」と思いました。
さらに、夏休みには1か月間お店を休み、高知で移住体験もしました。いの町と佐川町のお試し滞在施設を利用し、長女は候補の学校のサマーキャンプへ。もともと少し臆病で、祖父母の家にも泊まれないような子だったんですが、3日間一度も連絡がなく、帰りの車では「先生たち、最高だった!これからまた2泊3日いけるくらい楽しかった!」と言ってくれたんです。
そんな言葉に驚きましたし、子どもの成長ってたった3日でも環境が変わるとこんなに違うんだ!と、改めて大切にしたいと思いました。高知の自然や食材の豊かさにも触れて感動し、「ここなら家族で暮らせる」と実感しました。
高知の中でも、土佐市を選んだのはなぜですか?
長女はサマーキャンプを通して「この学校に通いたい」という気持ちが固まっていたので、通学や仕事のことを考えながら、具体的にどの地域なら暮らせるかを考えていきました。
妻はオンラインで仕事をしていたので、僕は地域を知ることができる仕事をしたいと思い、地域おこし協力隊の制度を調べました。土佐市と日高村にフリーミッションの募集があり、実際に役所にも話を聞きに行きました。
そのうえで、学校への通いやすさや住まいの選択肢、将来的に起業することも考えた人口規模などを比較して、「土佐市でやってみよう」と決めました。

協力隊では、どんなことをしようと考えていたんですか?
応募時には「地元のものの良さを生かしたい」と考えて、活動内容を提案していました。でも、実際に3年間やったことは、当初考えていたものとはかなり違うものになりました。
着任後、いろいろなことにトライしてみましたが、「自分だからこそできることは何だろう」と改めて考えるようになって。親子カフェを7年間経営した経験から、” 子育て “ を軸に活動していくことにしました。
ただ、フリーミッションとはいえ、何でも自由にできるわけではありません。やりたいことを形にしていく中で、「どこまでが自由なんだろう」という難しさもありました。
そこで、地域おこし協力隊のサポートしてくださっている「とさのね」の廣瀬さんに相談したところ、行政とのやりとりは、考えていることを文書にまとめて提案すると伝わりやすいと教えてもらいました。
総務省の要綱なども読みながら、制度の中でどう実現できるかを考え、自分の想いや希望を意見書にまとめて担当課に提案したんです。
そうしたら、きちんとした会議をする時間を作ってもらえて。そこで自分の考えを理解してもらえて、相談しながらやりたいことを形にしていけるようになりました。
3年間の活動の中で、「町の絵本」も制作されたんですよね。
これは自分のこだわりなんですが、『決して”押し付け”ではなく、想いに触れた人が”主体的に”自分と同じような考え方や価値観を想起してくれるか』を大切にしていました。
そこで、映画の自主上映会や離乳食教室、マルシェなど、地域の人が集まる場をつくりながら、色々な手段で自分の持つ ”子育ての価値観” を投げかけました。
それと、とにかく自分から動いて”ご縁”を作りました。人に会う。聴く。話す。笑う。飲む。歌う(笑)
実は結構人見知りなんですが。いや、自分でもよく頑張ったと思います。
その中で、3年目に入って協力隊卒業に向けて1年間かけて取り組んだのが「町の絵本」制作。
地域の風景や文化を描いた、文字のない絵本「ウィンメルブック」です。
「地域を絵本にする」ことで、自分たちが暮らす町の価値を”可視化”して、それを子どもたちに届ける。そして、地域の人たちにも「子どもたちのために、この絵本を一緒につくりませんか」と声をかける。
そうすることで、地域の大人たちが子育てを応援していることも、絵本の完成までの物語を通して色んな人に伝えられるんじゃないかと思いました。
制作資金も、できるだけ人とのつながりの中で集めました。地域の集まりでプレゼンし、人から人へ紹介してもらいながら、少しずつつながりを広げていきました。ここでさっきの縁づくりがどれだけ活きたか分かりません。
市役所の担当者の方も、広報での情報拡散や地域の事業者への声かけなど、行政だからこそできることを活かして一緒に進めてくれました。すごく一体感がありました、めちゃくちゃ嬉しかったですね。


現在は、どのような活動をされているのでしょうか?
協力隊を終えた後は、ありがたいことに地域の施設のマネージャーの仕事で声をかけていただき、働くことになりました。ただ、業務が増えて忙しくなり仕事はどんどん作業的に。子どもたちとの時間や自分の自己実現の時間もどんどん減っていって。「これ、何か違うかもしれない」と思っていたところに、妻が倒れてしまったんです。
自分が一番守りたい家族を守れない。このままではまずいと思い、オーナーに相談し、退職しました。
今はひとり出版社として「 こしょこしょカンパニー」を起業し、協力隊時代に制作した町の絵本を販売して全国に届けていくことと、民間の移住相談窓口として”移住者の暮らしと地域のシゴト”を繋ぐことの2つを軸に取り組んでいます。
自分自身が移住を経験して、地域の人にウェルカムしてもらえることの大切さを実感しました。だからこそ、今度は自分が迎える側になって、移住する前から地域と繋がれるきっかけをつくっていきたいと思っています。
また、「魅力を言語化する」ことも得意なので、移住者だからこその視点で地元企業の中にある魅力を見つけて、外に伝えていくことにも取り組んでいきたいです。
実際に高知で暮らして、親子の暮らしや子育てはどう変わりましたか?
僕たちにとっては、「守ってあげたいものを守るための移住」だったので、それを実現できていることが一番うれしいです。
子どもが生きる強さを身につけていく姿に感動すると同時に、親としても子どもを信じる力が育ったと思います。
今は次女も同じ学校に通っていて、姉妹それぞれが自分らしく過ごしている姿を見ると、この環境を選んでよかったと思います。
もちろん、地方ならではの不便さもあります。芸術や教養に繋がるエンタメの少なさなど、選択肢が限られることもあります。でも、それを「ないから諦める」とは考えていません。
会いたい人がいれば会いに行けばいいし、高知では得られない刺激があるなら、そこに行けるように仕事を頑張ればいい。実際、年に1回は関東に帰って、以前の友人たちと会っています。
移住したら、今までのつながり方が変わるだけなんですよね。知り合いが減ったわけではなくて、高知に来てから、むしろたくさん増えました。


最後に、これから高知への移住を考えている方へメッセージをお願いします。
まずは、高知をよく知ることですね。
”あなたにとって” ここはどんな地域なのか。何を大切にしたくてどんなご自身でいたいのか。
その為のリサーチを大切にしてくださいね。
移住は”目的”ではなく、あくまでも”手段”だと思っています。
「高知に行けば幸せになれる」「協力隊になれば、やりたいことが実現できる」と考えてしまうと、何かうまくいかなかったときに、「移住のせい」「地域のせい」にしてしまう。
そうではなくて、「自分は何をしたいのか」を考えて、そのために移住という手段を使う。そのほうが、何かあったときにも前向きに考えられると思います。
そして、どこかご縁を感じたらぜひ高知や高知の人に触れてみてください。
僕自身もそんなご縁のどこか一部になることができたらとても嬉しく思います。
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