移住者インタビュー
自伐型林業をミッションとした協力隊を経て、自伐型林業家として独立した滝川さんにお話を伺いました。
滝川 景伍さん
神奈川県から2014年に高知県佐川町へ移住。 「自伐型林業」をミッションとした地域おこし協力隊を経て、自伐型林業家として独立。
―職場が、ビル街から森へ。
山登りは以前から好きだったけど、林業を仕事にするとは10年前なら思いもしなかったです。大学卒業後は東京の出版社に入社して、〆切が近づくと当たり前に徹夜で仕事をしてました。結婚して子供が生まれてもそれは変わらなくて、子育ては妻に任せきり。都心の職場と自宅を往復する日々でした。
それなりに充実していましたが、30歳になって、毎日終電で帰る生活が疑問に思えて…。これからの生活を考えるようになりました。
農業を始めようかな、なんて考えるうちに「自伐型林業」という言葉に出会い、「これだ!」って思いました。なぜかはわからないけど、強く魅かれた言葉でした。
―小さく、長く、ずっと続けられる仕事。
「自伐型林業」は、地域の住民が自分たちの山を自分たちで守る、昔ながらの方法です。僕なりに言い換えると、「地域の林業」ってことです。地域にある山林を地域の人とコミュニケーションをとりながら、山番として世話をしていく。
今の僕の仕事場は、佐川町の虚空蔵山です。(町が多くの山主を説得して集約化を進めてくれて)この山だけで林地が100ヘクタール近くあります。この土地を離れることなく、ずっと林業で食べていくのに充分な広さです。
自伐型林業は、高知県では「小規模林業」と呼ばれています。小規模だから自然にかける負荷が小さい。一人50ヘクタールあれば継続的に林業を続けられる。持続可能な林業です。
―林業って食べていけるの? いけます!
林業は儲からないでしょ、って言う人は僕の周囲にたくさんいました。そういう声には結果を出して答えるしかない。特に妻や両親を不安にさせないように、ワークライフバランスをきちんととりつつ、家族を養えるだけの収益もあげています。
昨年度までは一人(現在は、同じ地域おこし協力隊卒業生と『LLPカスガイモリ』を結成し、二人で作業)で山に入って作業していたので、作業の進捗も自分次第。木を伐って売るだけではなくて、山肌を削って作業道をつけるのも大事な仕事です。トラックが入れる作業道を作れば、町から補助金がもらえます。一人で一日がかりでおよそ20mくらい進みます。
自分がつけた道を歩くときの爽快さって、道を作ったことがある人にしかわからないかもしれません。自分で道を切り開くって言い回しがありますが、やってみると文字通り、すごい達成感があります(笑)。
―世代をまたぐ、森の仕事。
僕の仕事場、虚空蔵山には40年~50年生のヒノキが多いです。でもこれは人工的に植えられたもの。もっと広葉樹を増やして、できるだけ針広混交の自然の森に近い形にするのが夢です。そんなに簡単じゃないし、そうなるには僕の世代のうちは無理。世代をまたいで、何十年もかけて山林の経営管理をしていかないと実現しない。
林業の面白いところは、仕事のスパンが自分の人生より長いことですね。自分の子か孫の世代になって、やっと森の形ができる。数十年後、百年後につないでいくために今日の働きがあるんです。
―自分をひとりの個人として認めてくれる。
僕がどこの出身かは関係なく、新しいご近所さんと思ってくれる人が多いです。
佐川町に来てから、僕のことを単に滝川さんと呼んでくれる人が増えました。○○社の滝川さん、みたいに所属で呼ぶのじゃなくて、年齢や職業を超えて、友達のような同僚のような、カテゴリがごちゃ混ぜになったフランクな話し方。それってとても心地いいんですよね。
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