移住者インタビュー
悩んだ末のUターン。今では建設会社の三代目として、地域活性に繋がる経営をしています。
古味 雄也さん
東京でバリバリ働くシステムエンジニアが仁淀川町へUターン
仁淀川町で生まれ育ち、自然の中で体を動かすのが大好きな子どもでした。高校進学とともに高知市内に出て、その後大学進学をきっかけに東京で暮らし始めましたが、体を動かすことが変わらず好きで、学生時代は柔道やアメフトに打ち込み、大学生の時にはジムでアルバイトをするなど、ずっと運動を続けていました。
そのまま東京で就職し、システムエンジニア(以下、SE)として仕事を始め、すぐに大阪へ転勤となります。仁淀川町で暮らす両親には「自分の道を進む」と宣言して出てきましたので、故郷に戻るつもりはなく、IT業界でやっていくんだという気持ちで仕事に取り組んでいました。SEはやりがいのある仕事でしたが、一方で、自分が担当できるのは膨大なシステムの中のほんの一部分という分業構造へのモヤモヤや、体を動かすことが好きという自分の性格を考えると、果たしてこの仕事が合っているのだろうかと疑問に思うことがありました。
そんなある日、父親が体調を崩してしまいます。父親は仁淀川町で30年以上続く建設会社の2代目です。兄弟は仕事を継がないと言っていましたので、悩んだ末、仁淀川町へUターンすることに決めました。父親から「帰ってきて継いでほしい」と言われたわけではなく、家族のこと、仕事のことなど複合的な要素を考えての決断でした。
建設素人が、半年で代表取締役就任へ
2013年に仁淀川町へ戻り、家業である西部建設に入社しました。「地方で暮らしたいけれど、仕事がない」という人もいる中で、自分には帰る場所と仕事があるということは、とても恵まれたことだと思っています。
入社後は、まずは建設業に打ち込みました。まったくの異業種からの転職でしたので、右も左も分からない状態からのスタートでした。そんな中、代表取締役に就任したのは入社して半年後のこと。技術力があり、信頼できる社員が育っていましたので、建設業の技術的なところは任せて、自分は経営や地域内外とのネットワークづくりに取り組むことにしました。
建設業を知っていく中で、自社が公共事業への依存度が高いことが分かります。そのような状況で事業を拡大させていくことの難しさを感じるとともに、人口減少・高齢化が進む地方で若手社員を確保し育成することへの課題を感じました。事業を維持・発展させていくためには、地域とそこに住む人が元気であることが必要不可欠です。そのために取り組むべきことは何かと思いを巡らせました。
観光客を案内するうち、体験型観光のもたらすインパクトに気づく
私が高知に移住後、前職の同僚たちが毎年遊びに来てくれていて、みんなを案内することが私の楽しみでした。高知を隅から隅まで案内し、さて次に高知に来てくれた時にはどこに案内しようと考えた時に思いついたのが「体験」でした。
それならば、私が住む仁淀川町で川遊びを楽しんで欲しいと思い、カヤックを用意することにしました。仁淀川の透明度をより楽しめるようにとクリアカヤックを購入し、同僚たちに乗せると大喜び。その後も地域のイベントで子どもたちにクリアカヤックを体験してもらうなどするうちに、アウトドア事業に興味を持つようになりました。
仁淀川町の財産である仁淀川を通して、観光客を呼び込み、交流人口を増やすことで、地域の活性化に繋がるのではないかというのが、興味を持った理由です。
「仁淀川アウトドアセンター」を設立し、新事業スタート
仁淀川という貴重な資源を生かしたアウトドア事業に取り組みたいということを周りの人に話しているうちに賛同してくれる仲間が徐々に増えていき、2020年、西部建設の新規事業として「仁淀川アウトドアセンター」を設立しました。
社員には、建設専業のスタッフ、建設とアウトドア兼業のスタッフ、そしてアウトドア専業のスタッフがいます。アウトドア関係の仕事というと季節労働者のような雇用形態が多い中、当社では年間通しての雇用で社会保障制度なども完備しています。
アウトドア事業をきっかけに、大学生が仁淀川町に滞在してインターンシップを行ったり、フィールドワークを行ったりといった事例も出てきました。今後も、地域外から訪れる人の受け皿となれるよう、アウトドア事業を育てていきたいと考えています。
仁淀川町の未来をともに作ってくれる社員を募集中
西部建設では、当社の事業に一緒に取り組んでくれる仲間を募集しています。アウトドア事業に関して、興味を持つ方も多いと思います。ですが正直なところ、「アウトドアが好き」「SUPが好き」といった動機だけでは長続きしないと思います。カヤックやSUPは、地域を活性化させるためのツールというのが当社の考えです。そのため、どのアクティビティを採用するかはその時の流行によって変化していくと思います。それよりも、仁淀川町という町を元気にしたいという気持ちや、人とコミュニケーションすることが好きという気持ちを大切にしている方と一緒に事業に取り組みたいと考えています。
私たちは、この場所で20年、30年と暮らしていきます。地域の未来を作るのは私たち一人一人です。今の私は、より良い未来を作れるようにとたくさん種を蒔いている状態です。蒔いた種が芽吹く日を、心待ちにしています。
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