移住者インタビュー
佐川町には流れるようにたどりついた?遠藤みさきさんにお話を聞きました。
遠藤 みさきさん
靴下デザイナーとして過ごした社会人生活
芸大を卒業後、興味のあった繊維にまつわる仕事を中心に、フリーランスでデザインに関わる仕事をしていました。振り返ってみると、自分がおもしろそうと思ったことに貪欲な20代前半でしたね。20代後半にさしかかった頃、「一度、腰を据えて仕事をしてみたい」という感情が芽生えました。そうして27歳の時に初めて就職したのが、靴下をつくる会社です。中学生の時から靴下が好きで、コーディネートのアクセントとしてこだわりを持っていましたので、仕事はとても楽しかったです。
大阪、東京、千葉と勤務し、デザインや商品企画を担当していました。8年ほど経った頃、この先、デザイナーとしてスキルアップし続けるため、そして「ノマドに生きる」という夢を叶えるために退社を決意し、その後はフリーランスとして仕事を始めました。
「地球人」としての在り方を考えた2020年
2020年、コロナ禍という状況が私に大きな変化をもたらしました。これほどまでに、世界中が同じ厳しい状況になることは私の人生において初めてのことです。今まで生きてきた中で感じた社会に対する違和感に加え、地球で暮らす「地球人」として、どう在るべきかを考え直したいと思いました。具体的に何をすべきかというところまでは分かっていなかったのですが、今までどおり、首都圏で生活し、仕事をし続けるのだけは違うという確信はありました。
移住に向けて、まずは仕事の内容を見直すことから始めました。抱えている仕事をひとつひとつ見直し、違和感を感じるものを順番に終わらせていきました。後先考えず仕事を終わらせてしまっていたので、最終的には抱えている仕事は一つだけになっていました。
仕事とともに、無意識に握りしめてしまっていた概念や価値観を徐々に手放すという内面的な見直しも行いました。本来の自分自身の感覚を思い出す作業のようであったと感じています。仕事も、凝り固まった概念も、積極的に手放していくことで段々と身軽でクリアになっていきました。
自分と向き合う一年を経て、旅に出た2021年
自由な時間が増えた2021年。これから暮らす場所を求めて沖縄県宮古島や京都、滋賀などを旅しました。旅をする中で、たくさんのすてきな場所に出会いましたが、住むとなると少し違うなと感じていました。
そんな中、なぜか「高知県」を見聞きする機会が多いことに気がつきました。正直、この時には高知県は移住先の候補に全く入っていなかったですが、一度は行ってみたほうがいいのかなと高知行きを計画しました。
高知には8日間滞在し、高知市内と高知県西部を巡りました。高知龍馬空港に降り立ち、空港連絡バスで市街地へ移動していると、なぜか「肌に合う」感覚を感じたことを覚えています。滞在中、特に印象的だったのは人の温かさです。出会った人と会話する中で移住を検討していることを伝えると、高知で暮らす人を紹介してくれたり、仕事を紹介してくれたり、何者かもわからない自分にとても優しく接してくれました。見返りを求めない高知の人たちとの出会いは衝撃的でした。こうした温かな高知の人たちとの出会いを経験し、「高知へ移住することに向けて進もう」と決めました。
タイニーハウスを中心にしたコミュニティを作りたい
移住前から、高知で実現したい暮らし方は明確に決まっていました。「山にタイニーハウスを作って暮らしたい」ということです。それは、自然と調和し、人々の少し得意をシェアし合える。これからのあり方を体現する暮らしの場づくりです。ゆるやかで小さなコミュニティを作りたいという思いを持っていました。ですが、高知のどの街ならそんな暮らしを実現できるのかが分かりませんでした。
そんな時、「高知家で暮らす」のサイトで仁淀川流域の市町村が参加するオンラインイベントが開催されることを知り、まずは軽い気持ちで参加してみることにしました。そのイベントで移住コンシェルジュさんに紹介してもらったのが、今私が暮らしている佐川町です。
イベントでは、ものづくりを行う「発明ラボ」という取り組みや、発明ラボに携わる地域おこし協力隊があることを教えてもらいました。後日、オンラインで再度相談をして、タイニーハウスの実現など私の望むことが佐川町に全てあるのではないかと感じました。
そこから佐川町に絞り、移住に向けて進み始めました。改めて高知を訪れたのは、佐川町移住に向けた下見のためです。11日間の滞在中、ほとんどの時間を佐川町内で過ごしました。自転車で町内を移動したり、産直市で買った野菜の新鮮さに驚いたりしながら、実際に暮らすイメージを膨らませました。
全てが流れるように進み、佐川町の地域おこし協力隊として着任することになりました。住む家はあえて町内のアパートを選びました。まずは、東京での生活とのギャップをできる限り小さくして慣れることを優先し、その先に山での暮らしを描いています。
佐川町で暮らし、初めて生まれた「私の町」という感情
生まれたところでもなければ、育ったところでもない佐川町に、今私は暮らしています。移住して一年も満たないですが、不思議なことに「私の町だ」という気持ちが芽生えています。こんな気持ちを持ったのは初めてのことです。この小さなコミュニティの中に、友人ができ、仕事仲間がいて、知り合った子どもたちがいることが、家族のような安心感をもたらしているのではないかと思います。
佐川町を知ったのは、たまたま参加したオンラインイベントがきっかけでした。そこから、流れるように移住が決まり、現在に至ります。自分の感覚に従って動いたことで、正しい方向に運ばれてきたのだなと思います。
地域おこし協力隊の仲間たち。左端が遠藤さん。
取材を終えて(編集後記)
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