移住者インタビュー

物はないけど、人はいる。 自分のやってきたことが信頼を生み、それが物の不足を埋める。

一覧へ戻る 物はないけど、人はいる。 自分のやってきたことが信頼を生み、それが物の不足を埋める。

 

山田 朋広(やまだ ともひろ)さん

  • 出身地:静岡県
  • 現住所:大川村
  • 移住年:2020年

静岡県出身。東京で12年間技術系の職種で会社員生活を送ったのち、2020年に緑のふるさと協力隊として大川村に入村。1年間のボランティア活動を通じて村民との交流・村での暮らしを体験。2021年からは地域おこし協力隊として「空き家・廃材の利活用」をテーマに活動中。マルチワーク(複業)の実践を目指して、休日にはパン作りやラーメン作りにチャレンジしている。

地域ぐるみの、古き良き助け合い。

れいほく(嶺北)の人の第一印象は押し出しの強い人が多いのかなと思っていました。話す言葉のイントネーションも、出身地の静岡とは違って、語気が強く思えました。
でも一度知り合いになって、よく話してみたら、全然違ってました。

僕が最初に大川村に来たのは、2020年。1年間、緑のふるさと協力隊としてあらゆるボランティアをしました。ユリ栽培の手伝いをしたり、はちきん地鶏の仕事を手伝ったり。一度手伝いに行くと、僕の顔を覚えてくれて、帰り際にはお土産をくれる人もいました。

道で車が脱輪しているのを見たら、たとえ相手が知らない人であっても助けるような土地柄です。古き良き助け合いみたいな感じの関係性。地域ぐるみの手厚い助け合いは、これまでの生活では経験したことがありませんでした。


好きな場所は山中ユリ農園。村や山の様子が見渡せて、目の前一面が森の緑。絶景です。

相手の顔が見える距離。

村では、目があえば誰とでも必ず挨拶をかわします。すれ違っては声をかけたり、ちょっとした仕事を手伝うとそのお返しのやりとりがあったりして、何事につけ相手の顔が見え、反応が見えるのが都市とは違います。村での生活は、人とのつながりが濃くて、相手と自分の関係性が明確だなと感じます。

都内でメーカーに勤めていたときは、ユーザー(顧客)が喜んでいる顔が思い浮かばなくて、どんなふうに届いているのかわかりませんでした。

でも今は、自分のした行為の反応がダイレクトにかえってくる、その距離感に感動します。喜ぶ人の顔が、やりがいにつながっていると思います。

山田朋広03 大川村 れいほく
東京での生活のひとこま。趣味でバンドを組んでいました。

欲しいものは、自分で作る。自給自足の生き方が僕の憧れです。

27歳のときに体調を崩して、食生活を見直しました。それまでは意識していなかったけど、食べ物を変えると心身も変わるんだということに気付いたんです。
僕は実家が無農薬有機栽培のコメ農家で、昔はそれを良く思っていなかったのに、急に興味がわきました。自然由来の食べ物を作ることを、生業(なりわい)にしたいと思い始めたきっかけでした。

山田朋広04 大川村 れいほく

今はマルチワーク(複業)の実践を目指して、いろいろな仕事を生業にしようとしています。空き家や廃材の利活用、パン作りやはちきん地鶏のガラを使ったラーメン作り、それに村のえき「結いの里」の店番。それに村のタクシーの仕事も始めようと計画中です。
中でも、パン作りの仕事は自分の中で大きな部分を占めていて、いずれは村でカフェベーカリーをできたらいいなと考えるようになりました。

東京での、仕事帰りに居酒屋へ飲みに寄ったり、洋服を買いに行ったり、そういう気軽さがたまに恋しくなる時もあります。10年以上過ごした東京での生活は、「たくさんあるものの中から選んで消費する」というものでした。
その点、村では、欲しいものは選ぶというより「作る」もの。工夫の余地が大いにあるのが面白い。不便さゆえの余地です。

パン作りもそう。最初は、村にパン屋さんがなくて、「ないから作ろう」という気持ちでスタートしました。でもまさかそれを売るとまでは思ってなかった。もし都会に住み続けていたら、ベーカリーを始めたいなんて思いもしなかったと思います。

山田朋広05 大川村 れいほく

「山田くんのパン」が教えてくれたもの。

大川村に「特産品開発グループ」という、10人程度の集まりがあります。女性たちを中心に、集落活動センターに月1回~2回集まって、村の特産品を作り出そうとしているんです。

自宅で作った試作品を配ったりしているうちに、僕がやろうとしているパン作りの話を聞きつけて、特産品開発グループの人たちが手伝ってくれるようになりました。「山田くんがパン作るんなら、どんなものか食べてみたい」と言ってくれたんです。

山田朋広06 大川村 れいほく

僕はこれまで、能動的に仕事に取り掛かるタイプではありませんでした。パンを作り始めたときも、自分が食べたいから作るという、個人的な目的のために始めただけでした。
だけど村の人たちが集まってきて、周囲がにぎやかになり、僕のパン作りが生業になりはじめました。この展開に自分でも驚いています。

僕が作るパンを「山田くんのパン」とか「山田ベーカリー」とか呼び名を付けて面白がってくれる人、村でできた野菜や肉を挟んでハンバーガーにしようと言う人、いろんな人が僕の背中を押してくれました。新しいことをやり始めた僕を歓迎してくれたんです。

最近、月に一回ですが「はちきん地鶏ハンバーガー」を村内で販売し始めました。僕が作ったバンズに、村特産の地鶏を使った照り焼きチキンハンバーグ、トマト、レタス、玉ねぎを挟んだハンバーガーです。

ベーグルやアンパン作りにもトライしています。もともと作る予定じゃなかったけど、リクエストが来て、挑戦し始めました。みんなから声をかけられることが、やりがいにつながっています。それにこたえたいなと思います。

山田朋広07 大川村 れいほく はちきん地鶏バーガー
はちきん地鶏ハンバーガー。
村のえき「結いの里」で月に一度だけ販売しています。

静けさに気づく、ノイズのない夜。

大川村に暮らしていると、食べ物も生活のリズムも、自然とともにある感じがします。
毎日夜7時には夕食を終えて、自宅で自分の時間を過ごすようになると周囲がまったくの無音で、その静けさにハッとします。水の流れる音や、虫の声がする程度。

ひとりでぐるぐる考え事しているときは周りの静けさに気づきません。考え事をパタッとやめると周囲の静かさに気づく。電車や車の音もないし、環境音がほとんどしない。自然の音だけ。

何も考えずに夜の静寂の中に身を置いていると、知らず知らずのうちに心が浄化されていく気分になります。自分がノイズを発していたんだという気すらしてきます。東京に住んでいたころ、ここまでのレベルで静かさを感じたことはありません。面白いなと思います。

大川村の職員の方と。
大川村の職員の方と。

おすすめ記事

オススメコンテンツ

イベント情報や支援情報など、
最新の情報をメールでお知らせします!

Go Top