地域の人。繋がりで叶えた夢の開業
掲載日:2025.01.20
Profile
2016年Iターン
Yamamoto Market(山本書店)
書店オーナー、ライター、イベントプランナー
岡本さん
Okamoto
神奈川県→黒潮町
小さな頃から遊びに来ていた高知で再就職
高知は母の出身地で、子どもの頃から年に数回帰省していました。大学時代も夏休みのたびに長期で滞在するぐらい、高知の空気感が好きだったんだと思います。
大学ではメディア学を専攻、新卒で地域情報誌の会社に就職したのですが、長続きせず…。「どうしようかな」と母に相談したら、冗談めかして「高知へ行ってみたら」と言われて。
ネットで調べていると偶然、黒潮町が職員募集をしていたので、採用試験を受け、この町に来ることになりました。
役場では、前職の経験を買われて、広報誌やホームページなどの情報発信の仕事をさせてもらいました。
今のお店の大家さんと出会うきっかけのwebマガジンもこの時からの仕事で、現在もライターとして継続させてもらっています。
役場の仕事で思い出に残っているのは、今でも続く映画イベント「The Moonlight Film Festival」ですね。
上司から「若者が集まるようなイベントを企画してほしい」と言われたんです。その時、出身地の神奈川の「逗子海外映画祭」を思い出しました。黒潮町には美しい砂浜がある。それを生かさない手はないと。
いきなり自分のやりたいことをやらせてもらえた喜びと、不安が入り混じりながらも、役場や地域の皆さんの協力のおかげでイベントを無事終えることができました。
その後も年々来場者が増え、この町なら自分のやりたいことができるかもしれないと思いました。
本屋をオープンできたのは、地域の応援のおかげ
私が本屋を開業できたのは、地域の方のサポートが大きいです。大家さんもその一人。大家さんとは、私が役場にいた頃から携わっている“webマガジン(うみべのくらし)”の取材で出会いました。
ちょうど、いろいろと悩んでいる時に、「全ては学びの場。役場で働いていることだって、糧の一つにして良い。やりたいことに挑戦してみたら」と背中を押してもらいました。
屋号は「Yamamoto Market」と言います。由来は、祖父母が黒潮町の隣の四万十町で「山本書店」という本屋を営んでいたことにあります。
実は、母も長年図書館で働いていたくらい本が身近な存在で、私も商売をするなら書店をベースにしようと。
ただ、書店経営だけではなく、人の出会いや憩いの場にしたいという思いもあって「山本マーケット」にしたんです。
マーケットは、いろいろなモノを売って、いろいろな人が来ますよね。地域の人がふらっと遊びに来れる、そんな場所にしたいと思っています。
それで、今も物件を探している途中なんです。大家さんが「その場所が見つかるまでは家の横のログハウスを使ったらえい」と提案してくれて。
この町は、若い人の夢を応援してくれます。みんなが自然に助け合う、おおらかな風土があったからこそ開業できたと思っています。
イベントを通じて地域を盛り上げたい
役場時代に培った経験や人間関係を通じてYamamoto Marketでは、イベント企画もしています。
11月は、「こもれびBook Market」というイベントを開催しました。12月は、本屋さんもある敷地で、イルミネーションや焚火で彩る「クリスマスマーケット」を開催する予定です。
また、黒潮町在住の女の子と結成したMARI TO LISAというユニットでもイベントを企画しています。
9月には、音楽とビールなどを楽しむイベント「Siokaze」を開催。イベントを通じて、たくさんの出会いがあって友達と友達がつながっていくのが、どうやら私、好きみたいです。
日本一、地震津波対策をする町
黒潮町は南海トラフ大地震発生の時、最大34.4mの津波が予想されています。
だからこそ、黒潮町では町ぐるみで真剣に津波対策をしています。避難タワーなどのハード面はもちろん、避難訓練も年に何回も実施しています。
町民全体が参加する訓練では、実際の避難場所まで、避難ルートを確認しながら歩き、地区によって炊き出しや備蓄品の確認をするなど、万が一を想定して本気で対策をしています。
さらに、各自が避難ルートなどのカルテを作り、近所同士で確認するなど声をかけやすい対策を施しています。
おそらく日本一津波対策をしている町です。不安はもちろんあります。けれど、みんなで一緒に逃げる、逃げられる、そして、防災への意識が高い地域という安心感はあります。
今が一番!毎年、人生のベストな時間を更新中
大家さんが「犬でも猫でも何でも飼っていいよ」と言ってくれたので、昨年からゴールデンレトリバーを飼い始めました。
休日は、コーヒーを持って家の前の海岸で一緒に遊ぶことが多いですね。私にとっては、このゆるやかな時間の流れも大切なんです。
高知での暮らしを通して、私が一番変わったのは、自分の周りで起こった出来事を自然に受け入れられるようになったことです。
以前は、こうでなければいけないと思いがちでしたが、考えが違っていてもそれで良しと、自分が柔らかくなれました。
今は、毎年、人生のベスト時間を更新中。本当に良い場所に暮らしていると思う日々です。
青い海を望む小さなログハウスが、岡本さんが営むお店。
店内では、レコードから流れるジャズの音色を聴きながら、黒潮町近郊出身の著者の本や、暮らしを楽しむエッセイや小説などを自由に手に取ることができます。
黒潮町を舞台に自分の夢を見つけ起業した彼女を、地域のみんなも応援。人と人とのつながりの温かさが漂う小さな本屋さんは、何度も通いたくなるステキな空間でした。
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