
【地域おこし協力隊に応募したきっかけは?】
大学時代、進路に迷っている時に友達がすすめてくれました。
大学ではアジア太平洋学部に所属し、国際協力や地域開発を主に学んでいました。タイの農村地域で教育支援などにも取り組んできましたが、問題の根本や本質を理解できていなかったんです。貧困など色々な問題はもはや一地域だけの問題ではなく、全ては繋がっていて、これからの世界や社会の理想とする姿を描き自分から体現していくことも同時に必要だと痛感しました。ましてや、自分が暮らしている地域のことさえ知らないのに、海外ばかりに目を向けている自分に疑問を抱き、まずは自分が暮らす日本、そして自分自身と向き合うべきだと考えていました。そんな時、本山町の地域再生マネージャーをしていた斉藤さんが大学で講演されたことが縁で、友人伝いに地域おこし協力隊という仕事を知り、すぐに応募しました。


大学時代の写真。当時の性格はなんでもやってみるタイプ。 今でもその性格は変わらず、興味がわいたものは何でもチャレンジ!
【高知県に移住してみて思うことは?】
田舎には「本物」がたくさん転がっている!
高知県は、とにかく山、山、山! 山にへばりつくように家が建つ光景には驚きました。でも、風に吹かれてなびく稲穂や、エメラルド色に輝く川、力いっぱい鳴くセミの声など、とにかく綺麗なものがいっぱいです。そういうものが日常にあるということに幸せを感じています。あと、食べ物にせよ、自然の色・形にせよ、全てのものの起源が田舎にはあって、「本物」がたくさん転がっています。いつも自然に守られている感じがしますね。

「仁淀川が仁淀ブルーなら、汗見川は汗見グリーン」。エメラルド色をした汗見川はお気に入りスポット。現在、汗見川上流の物件を検索中…

高知は祭りが多い。運動会だけでも、農民運動会、町民運動会、職域運動会、汗見川ニコニコ運動会など、出場しっぱなし(笑)
【どんな仕事をしているのですか?】
地域の人たちと一緒にものづくり。
最初の仕事は地場産品の商品開発でした。本山は有名な米どころ。どぶろく特区をとっているので、地域の人たちと一緒にどぶろくを製造しました。ラベル作り、営業、イベント出店など、色々携わってきましたが、商品が完成した時は涙がでるほど嬉しかったです。これからは、蕎麦の収穫&蕎麦打ち体験の企画もしていきます。林業にも従事しているので、間伐・搬出はもちろん、育林や木材の活用についても学んでいきたいです。また、白髪山の見所や登山コースの発掘にも力を入れ、ガイドできるようにもなりたいです。

「たんころクラブ」のメンバーと。木の根元や間伐材などを薪に製造して独居世帯などに宅配。薪ストーブやピザ釜、ボイラー等への利用も広めていきたい。

地域の皆さんと一緒につくったどぶろく「山の雫」。現在、「てんこす」や「末広ショッピングセンター」などで発売中。
【高知県に移住してきて苦労したことは?】
地域おこし協力隊卒業後、1人立ちしてからが大変!
私は今年度で卒業なのですが、まだまだ不完全燃焼なので本山に残ります。来年の春からどうやって本山で生活していくのか、これからが勝負なんです。むしろ、ここからが本番!! 「百姓百業」の言葉どおり、1つの職業というよりは100の職業をかけもち、田舎で暮らす技を身に付けなければ生活できないかもしれません。
【地域おこし協力隊が主人公の「遅咲きのひまわり」が放送されますが、ドラマに期待することは?】
関わる地域全てが私のふるさとです。
「小さな町は大きな町の母である」の言葉のように、地方への関心が高まったらいいなと思います。都会の企業で働く人生が全てじゃない。地域の魅力に少しでも目が向けられるきっかけになることを期待しています。

【ドラマ「遅咲きのヒマワリ」を見て感じたことは?】
高知への観光客や移住者が増えるきっかけに!
ドラマの色んなシーンに高知県観光キャンペーン「リョーマの休日」ののぼりが掲げられていたり、主人公が選んだDVDが「ローマの休日」だったり、ポテトチップスが鰹のタタキ味だったり、宴会の席で返杯が行われたり… と、細かいところまで高知一色に演出されていたので、これを機に高知への観光客や移住者が増えればいいな、と感じました。また、ドラマを通じてあらためて高知県を客観的にみることができ、高知県の自然の素晴らしさを再確認できました。
【ドラマでは語られなかった、現場のリアルな声を教えて下さい。】
地域おこし協力隊の仕事は地域によって様々!
ドラマでは地域おこし協力隊の仕事が、高齢者を病院まで送迎したり、畑仕事を手伝ったりと、地元の高齢者をサポートする形で描かれていますが、仕事内容は地域によって異なります。ドラマのような仕事もありますが、それが全てではありません。隊員の起業を目的とした仕事もあるし、地域の団体や公社に入って実際に仕事をこなしていくパターンもあります。私が所属している本山町の地域おこし協力隊でいうと、隊員が3年後に定住、移住することを応援してくれています。逆に言えば、地域の中でやりたいことを自分で見つけ、企画提案して動いていくことが必要になります。私は出来ていませんが、仕事をつくることが仕事ともいえるかもしれません。これから地域おこし協力隊を目指す方は、自分が地域で何をしたいのか、何ができるのか、また地域が何を望んでいるのかをきちんと調べ、自分の想いとマッチする地域を選んで移住することをおすすめします。募集要項などを見て具体的に問い合わせてみましょう。

本山町汗見川地域の新たな特産品としてお菓子を試作中。地元の皆さんと一緒に試行錯誤し、サポートしていくのも仕事。

瓜生野集会所にて「そばの収穫祭」の打ち合わせ。地元の皆さんと一丸となって企画し、11月〜12月にそばの収穫、脱穀、製粉、そば打ちの体験を行った。
【地域に暮らしてみて一番に感じることは?】
「地元にいたいけどいられない」「地元に戻ってきたいけど戻れない」
田舎の人たちは都会への憧れもあるけれど、なにより自分が生まれ育った地域に誇りをもっていて、郷土愛が強いと感じます。でも実際問題、仕事はやっぱり少ない。そのために「地元に戻ってきたいけど仕事がない」「地元にいたいけど仕事がないからいられない」との理由で、都会へ出て行ってしまう人も結構いる気がします。地域の高校生の中には、「いずれは地元に戻ってきたいけどどうしたら良いろうか?」「地域おこしで地元を盛り上げたい」と話す生徒も少なくありません。都会に対する憧れや自己実現のために出ていく方もいれば、地元にいたい、地域に貢献したいという想いが強い方もいるので、各々が持っている意思や個性を活かせる地域づくりが大切だと感じています。
【地域おこし協力隊のやりがいは?】
地域の役にたてた時にやりがいを感じます!
「どぶろく」の商品開発を通して本山町をPRできた時は、本当に嬉しかったですね。でも、本当に役に立てたとはとても言えませんし、地域おこし協力隊という名前自体烏滸がましい気がしてしまうこともあります。何事も始めることは簡単ですが、それを試行錯誤しながらも続けて「本物」にしていくことが大事なのだと思います。それは、商品であれ、人や地域との繋がりであれ、全てに通じる考え方だと思います。何でも続ければ良いという意味ではありませんが、一期一会という言葉が嫌いだった私が、一つ一つの出会いや積み重ねていく時間の重みを、改めて感じるようになりました。今はまだ、やりがいというより、色々な活動に手を出してどこか嘘っぽくなっていく自分が否めませんが、出会った縁を大切にして、自分自身が「本物」になりたいと思っています。

間伐、搬出、育林、材木の二次活用など、今後は林業にももっと力を入れていきたい。

今年収穫したそばの実。今年は不作だったので来年に期待!!
【あらためて地域おこし協力隊とはどういうことだと思いますか?】
都会と地方のバランスをとる一員!
地方で人口が減る、仕事が減るということは悪いイメージ。でも世界規模でみると人口が増えて問題になっている。私たちのような地域おこし協力隊は、まさにそんな今の時代の仕事であって、都会と田舎のバランスを均衡させる一員であるような気がしています。違った価値観をもった都会の人が地方に入り、色んな考え方をミックスさせることで地域を活気づけ、逆に都会の人は、前にも述べましたが「小さな町は大きな町の母である」というように、暮らしの原点から生きる力を学び、巡り巡って隔たったバランスを保っていく。地域おこし協力隊には、そんな役割があるのかもしれません。
【高知移住を考えている方へのアドバイス!】
高知は自然の宝庫! 思い切り楽しんで下さい!
高知は山、川、海と大自然の宝庫ですし、人も気さくで元気な人が多いので馴染みやすい地域だと思います。そんな高知を目一杯楽しむなら、まず車を用意すること。山間部で仕事をするならマニュアルも運転できる方がオススメ。また、高知は南国のイメージがありますが、山間部の冬は寒いので防寒対策はしっかりと。そしてなにより、高知には献杯、返杯文化があるので、飲み会の席で倒れないよう体調を万全にしてお越し下さい(笑)

地域おこし協力隊を通して移住する人は多い。野尻さんも3年の任期を終え、これから本山町で1人立ちする。